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17.09.21 サマーインタビュー

Pierre-Yves Caër Gallery によるインタビュー:
 

31/08/2017
Pierre Yves Caër Gallery

 
 Pierre-Yves Caër ギャラリーは、日本の現代アート専門画廊として2017年10月、パリのマレ地区( 7, rue Notre-Dame-de-Nazareth, Paris)にオープンします。ギャラリーは絵画、ドローイング、写真、彫刻、陶芸、織物など、様々なジャンルの抽象、具象作品を紹介していきます。
 10月12日から来年の6月30日までの間、私を含め作家計7人の個展を開催いたします。
 
(インタビューの和訳です)
 中嶋宏行、61歳。現在は東京に近い千葉市というところに住んでいます。20代に千葉大学で建築学を専攻し、ちょうど40歳を迎えた時、仕事を建築家から書家に変えました。2000年にローマのギャラリーで初個展、その後2008年からミラノにアトリエを設けました。
ひとは異なる環境の中に身を置くと普段気づかない発見をします。ヨーロッパでの生活を通して自分とは、自分の作品とは何なのかを知ることができました。
 例えば、毎日何気なく使っていた墨のこと。ある日、友達のイタリア人に作品を作るところを見せました。筆で紙の上に線を一本引く。墨はゆっくりと線の外へとにじみ、次第に広がっていきます。その時彼は「これはコントロール出来るのか?」と聞き、私は「いや、コントロールなどとても出来ない」と答えました。このやり取りが、自分の作品はいかにあるべきかを教えてくれました。自然の力とともに作品が生まれていく。この気づきが作家としての最初の転機でした。以後、私はこうした制御不能な自然の他力を敢えて受け入れながら作品を作るようになりました。
 
 作品制作の際、あらかじめこんなものを書こうという緻密な計画は立てません。実際に文字を書く時には、書き出しの第一画から最終画まで躊躇なく一気に書きます。途中で筆を止めたり、戻ったり、書き直すことは決してありません。だから出来上がった作品を見た人は、始点から終点まで筆がどのように動いたのかを想像することが出来ます。これは作品が時間と密接に関わっていることを意味し、この点で書は音楽やダンスと共通するものがあります。言葉を変えれば、筆によって生まれたアクションの軌跡は時間の軌跡でもあるということです。この気づきが私にとって二つ目の大きな転機となりました。
 画家は通常キャンバスと向かい合って筆をとりますが、私は床に敷いた紙に踏み入り、紙の上で踊るように手足を動かします。その結果、アクションの軌跡が線やかたちになって紙の上に残ります。頭より身体をより使うのです。このため毎日の作品制作では、まず太極拳で身体性を高め、頭の中を空にしてから紙の上に立ちます。一枚の紙に書くのは十秒もあれば足りるでしょうが、これを毎日何枚も続けていきます。そして最後に、例えば1,000枚の中からベストの一枚を選び取り、999枚を捨て去ることで作品の完成とします。これが私の制作プロセスであり、西洋の絵画のそれとは方法を異にします。
 
 これは「光」という文字です。この作品を見ると、筆がどのように動いたのか思い描くことが出来ます。禅に「今、ここ」という教えがあります。過去をどんなに悔いても今はどうすることも出来ません。未来を憂いても今はまだ何も出来ません。大切なのは自分が置かれた場所で、目前にある今を全力で生きることだと説いています。この作品はこうした思いを念頭に置いて、かけがえのない一瞬を結晶化させたいと考えました。
 


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